2009年8月24日 09:30

プーマ・デザイン・チーム、ボルト専用シューズを製作

ベルリンでのボルトの活躍は本当に凄かったよね。話題になっているボルト着用シューズの開発秘話をみんなに読んでもらいたいので、再び過去の記事を下に載せるよ。

今回の話は長くなりそうだから二度に分けて投稿しようと思ったけど、あえて一つの文章として投稿するよ。時間のある時に、是非読んでみてよ。十分その価値はあると思うよ。それでは行ってみよう!

bolt-design-203x250-custom.jpgプーマ・ランニング・ドット・コムでは今ジャマイカン・ウィークを開催しているから、最近僕らのフットウェア・チームがジャマイカ島を訪れた時の話を紹介するよ。僕らは今、ウサイン・ボルト専用のカスタム・スパイクを製作しているんだ;デザイン的な観点から製作しているのではなくて、フィット感を最優先にして作製を進めているんだ。つまり僕らは、ウサインの足に完璧にフィットするシューズを作製しようとしているんだ。彼の左足には左足専用に作製されたシューズを用意し、右足には右足専用のシューズを作るんだ。世界最速のランナーになれば、みんなもこんな待遇を受けられるんだよ。もちろん、僕らは誰に対しても、こんな感じでカスタム・シューズを作ることが出来るんだけどね。でも、後でみんなには結構な額の請求書を送ることになるけどね。

僕らのフットウェア・チーム(フィル、クレイグ、そしてドウェイン)はウサインの歩幅、足、脚の角度を研究するため、そしてカスタム・シューズに関する彼自身のアイディアを得るために、ジャマイカへと向かったんだ。ここからは、製作担当者であるクレイグからの報告だよ・・・。

僕らは湿度の高い水曜夜に、キングストンに到着したんだ-ボストンも暖かくはなったけど、ここの暑さには本当に参ったよ。出発前に、ジャマイカの空港には独自のルールがあるって聞いていたんだけど、その言葉の意味がよく分かったよ。僕らは空港の入国審査の列に1時間も待たされたあげく、入国審査官に僕らの渡航理由を一から十まで説明しなければいけなかったんだ。しかも、その時の審査官の態度ったら、はじめは僕らを完全に疑っていて、最後には悪意さえ示していたよ。

空港を出てタクシーに乗り、タクシーの運転手に僕らの渡航理由を話したんだけど、ジャマイカのタクシー運転手の反応はボストンのタクシー運転手と同じような感じだったよ。もちろん違う点もあるんだけど、キングストンとボストンのタクシー・ドライバーの違いはスポーツに関する絶対的な知識量ではなく、どのジャンルについて熟知しているかって点にあるんだ。キングストンのタクシー運転手はジャマイカ出身のトラック・アスリートについては何でも知っていて、丁度ボストンのタクシー運転手がなぜオーティス(デイビッド・オーティス;ボストン・レッド・ソックス所属の野球選手)がスランプにはまってしまったかや、ブラディ(トム・ブラディ;ニュー・イングランド・パトリオッツのアメリカン・フットボール選手)の怪我の具合を熟知している感じに似ていたね。空港からホテルまでの道のりは、結構楽しかったよ。でっかい採石場のような建物が丘沿いにあって、その脇を水辺沿いに通過したんだ。あと、夜には絶対に迷い込みたくないっていう感じの区域もあったね。約20分後には国立スタジアムに到着したんだけど、スタジアムは切り立った崖の上に位置していて、とっても印象的だったよ。僕らのホテルは、そのスタジアムから1マイルほど離れたニュー・キングストンと呼ばれる地域にあったんだ。

bolts-feet-blue-356x364-custom.jpgホテルにチェック・インするや否や、僕らは一直線にホテルのレストランに向かい、ジャマイカ料理とレッド・ストライプ(ジャマイカ製ビール)を堪能したんだ。晩ご飯の時にメンバーと明日の仕事について打ち合わせをして、どのシューズをどの順番でテストし、どんな詳細を詰めなければいけないのかを確認したんだ。もちろん、フィルと僕は、ウサインが僕らのスパイクに対してどんな反応を示すのか凄く気になっていたんだ。これらのスパイクには多大な労力が費やされているし、かなりの進化を遂げたと自負しているから、後はウサインの足にぴったりとフィットできるよう微調整を施すだけなんだよ。その日は気分良くディナーを終え、早速次の日に備えることにしたんだ。ところが、雨が降り始め、次第に雨脚が強くなってきたんだ。結局この雨は、翌日の昼頃まで降り続いたんだよ。

ここでは、2つの予期せぬ事が僕らを待ちかまえていたんだ:
1) 雨
2) ウサインが大の雨嫌いという事実

世界レベルのトラック選手は、雨の中で練習をすることを嫌うんだよ。なぜそうなのかって?彼らの仕事はいかにして速く走るかって事で、もし朝雨が降っていたら止むまで待つんだよ。止んだ後練習を始めるから、雨の中では練習を行わないんだ。でも、僕らにとってはそうも行かないんだよね・・・。雨が降っているという理由で仕事を延期し、雨が止むまで家で紅茶をすすっている事は僕らにはできないんだよ。だから僕らは、ウサインが雨の中で練習をしたくないって言い出した時は、すごく不安になったよ;だって、僕らの滞在期間はたったの1日しかなかったんだから!

元NCAAチャンピオンで400mリレーの元オリンピック選手でもあるジュリエット・キャンベルからようやく電話が来て、ウサインが今トラックに向かっているという連絡をもらったんだ。ジュリエットがホテルまで僕らを迎えに来てくれて、スタジアムまで送ってくれたんだ。僕らは国立スタジアムに隣接されている練習場に到着したんだけど、その時既に何人かの選手がトレーニングを始めていたよ。アスリート達はこの練習場でトレーニングをして、国立スタジアムのトラックは本番の時にしか使用されないんだ。トラックに到着したウサインは簡単なウォーム・アップを行っていたんだけど、僕らにとっては、それだけで身体が参ってしまうようなものだったよ。ウサインの準備が出来た段階で、僕らもようやく仕事に取りかかる事が出来たんだ。

bolt-tieing-shoes-166x232-custom.jpg僕らは最初に、ウサインに6種類の異なるスパイクを渡したんだ。これらのスパイクは、スパイク上部に使われている素材と足をサポートする強化材がそれぞれ異なっているんだ。ウサインの足はものすごい力を生み出すから、スパイクの重量を増加させずに、彼の足をしっかりサポートできるだけの強化材の量を確認する必要があったんだ。ウサインにはそれぞれのシューズを履いてもらい、様々な距離を走ってもらったんだ。フィルが、その模様をしっかりとビデオに撮影してくれたよ。この映像によって、僕らはウサインの足がどの辺りに着地するのか、彼がどんな感じで足を踏み込むのかを確認することが出来るんだ。これによって、シューズのどの部分に注意を払う必要があるかを決める事が出来るんだ。今回の撮影ではウサインに普段の60%の力で走ってもらったんだけど、それでももの凄く速かったよ。ウサインが走り終える毎に、僕らは彼に使用したスパイクについての感想を求めたんだ。新しいスパイクは、彼が北京オリンピック時に使用していたものより30グラムの減量に成功しているって話をしたら、彼はもの凄く驚いていたよ。ウサインからはとても貴重なフィードバックが得られたから、ベルリン世界陸上選手権用のスパイク開発における方向性もはっきりしたよ。

ウサインがトレーニングを終えた後、ドウェインがウサインの足の測定を始めたんだ。その後、ドウェインはカーボンでウサインの足型を取ろうと、彼の足をバイオ・フォームに乗せたんだ。これにより、僕らはウサインの足型について色々と調べることが出来るんだ(上記参照)。今回取ったデータを全て用いてウサインの足の正確なレプリカを作り、ウサイン・ボルト用のカスタム・スパイクを製作するんだよ。きっと、ウサインの足に完全にフィットする、完璧なスパイクが出来上がると思うよ。実は、ウサインの足回りを測定している時、僕はずっと気分が良かったんだよ-だって、シューズ職人として世界最速のアスリートのシューズを製作する事が出来るなんて、滅多にないことだからね。今回のことは、間違いなく僕にとって一生の思い出になると思うよ。

これで、世界最速の男のために、史上最高のシューズを製作する準備が全て整ったよ。ベルリンに向けて、早速製作に取りかかるよ!