すべて順調に行けば、今晩、米国現地時間の午後7時頃、ニューポート シップヤードに到着する予定です。船内がひどく冷えこんでいるため、もう少し遅れたらたいへんな思いをするところでした。
今回の航海は波瀾に富み、必ずしも快適な青海原の旅というわけではありませんでした。マデイラ諸島を過ぎてからの海の状態は、ひどいとしか言いようがないものでした。進路や風の変化に関係なく、航海の約80%の時間は、前方から微風が吹きつけてきました。
そうは言っても、すばらしい旅でもありました。新チームにとって、よいチーム作りの場となりました。初めての大西洋横断となったブラッド・リードとセイルデザイナーのスティーブ・コールダーにとっても、新鮮な驚きの旅となりました。ふたりとも「いったい私はこんなところで何をしているんだ」という表情を何度となく浮かべていたものの、チームに大きく貢献してくれました。そして、すでに悪いことは忘れ、良いことしか覚えていなくなっているようです。ただし、今のこの寒さだけは忘れられないでしょう。では、その寒さについて語りましょうか。
クルーが寒がっているかどうか確実に見分ける方法のひとつは、船内の寝台を覗いて、寝袋のファスナーが頭のほんの一部だけを残してしっかり最後まで閉じられているか確かめることです。その寝台に今、私たちはいます。ナビゲーターのトム・アディスにいたっては、寝袋にすっぽり潜りこんでしまい、私は彼がまだ甲板に残っていないか確かめるために寝台を揺らすはめになりました。
さて、明日から作業にまた戻ります。船艇をたたんだあと、航海の感想を述べあい、今後に目を向けながら過去の経験から教訓を学んでいきます。イル・モストロの次なる航海は、ニューヨーク ヨットクラブ スプリングレガッタ(New York Yacht Club Spring Regatta)とニューポート・バミューダ・レース(Newport-Bermuda Race)になります。いずれのレースへの出場も、競争目的ではありません。というのも、ハンディキャップ方式のルールのもとで、私たちだけがボルボ70の船艇、他はすべてハンディキャップ方式のレース用にカスタマイズされた船艇というなかでのレースだからです。けれども、私たちはボルボ オーシャンレースのレギュレーションを守って、今後と最終的な目標を見据えて挑戦を続けるつもりです。
こうして、イル モストロは、すべてが始まった場所へ戻ってくることになりました。もう千年も昔に思える2008年8月、夏のトレーニングを終えたあと、ニューポートを発ち、約5万5千マイルを航海してきました。ニューポートを出発するときの私は、一生ものの冒険が始まったのだと思いながら、いたく感動していましたが、どんな冒険が待ち受けているかまるでわかっていませんでした。ふたを開けてみれば、たしかに一世一代の冒険でした。しかし、これからの航海が、あの最初の航海の続きだとは決して言うつもりはありません。プーマ オーシャンレーシングの第2章は、イル モストロの帰港とともに幕を開けます。これは終わりではなく、新たな始まりなのです。
それでは、今回はここでお別れです。こうしてイル モストロの挑戦と苦難の旅を報告できるのは、すばらしい気分です。次回はニューポートからお伝えします。
ケニー