停泊所での出来事・・・
これまでのセーリングキャリアを通して、本当に多くの船に乗ってきたよ。セーラーなら周知の事実かもしれないけど、どんな船に乗ろうと基本的な部分は一緒なんだ。その船が100フィートの化け物だろうが関係なく、とにかく風を読んでボートを速く走らせること。どのボートでもそれぞれ特徴があるんだけど、大体すぐにどんな癖があるかはわかるね。パイナップルカップは、ランブラー100号で迎えるプーマチーム最初のレースなんだ。
僕らにとって都合の良いことは、今回のフォートローダーデールからジャマイカまでのレースにおいて、何隻か手ごわいボートが参加しているってことなんだ。今回のレースでは全部で18隻のボートが参加しており、うち9隻はIRCルールでレースをするんだ。ジェニュインリスク号やボージェスト号をはじめ、50フィートのライバルたちはみんなIRCルールに合わせてきており、僕らと同じようにスタートライン上でレーススタートを待っていたんだ。
セーリング101:天気は本当に思い通りになってくれないね。僕らのナビゲーターであるトム・アディスが早々に警告を発し、天気があまりよくならないことを伝えてきたんだ。今回はIRCを走破するだけじゃなく、ランブラー100号でコースレコードを更新するのが目的でもあるんだ。でも、それにはちょうど良い風が必要で、今回のレースは良い風向きなしには良い結果が得られないんだ。セーリングは時として運によってかなり結果が左右されてしまうけど、今回のレースでは僕らはちょっと運に見放されてしまったようだね。特に、今回のようにレース中常に先頭集団にいるボートは特にそうだよ。ある天候パターンが僕らの力になってくれることもあれば、同じ天候パターンが僕らの足を引っ張る事だってあるんだ。
僕らは良いスタートを切ることができ、48時間後にはキューバに到着したんだ。後続のジェニュインリスク号に対しては70マイルの十分なリードを保つことができ、彼らに対しては4時間弱のハンディがあるんだけど、スタートから48時間たった時点ではそれを含めても間違いなく彼らをリードしていたんだ。一方、キューバ到着時点では、ボージェスト号は1時間弱の差で僕らの前を走ったいたんだ。ただし・・・、レースはキューバで終わるわけではなく、まだまだレースは続くんだ。これまでの幸運がこの後変わってしまうんだよ!
それは、僕らが"停泊所"に着いた頃に起こったんだ。キューバには正午ごろ到着し、その時間帯にキューバの東側に吹いている海風を頼っていたんだ。可能な限り沿岸に近づく予定で、その時はハイチとキューバの間にはほとんど風が吹いていなかったんだ。その後南風に乗ってキューバ沿岸に流されたんだけど、その時の風速はグアンタナモ湾で11ノットだったんだ。グアンタナモ湾自体、コースから50マイル程度離れているんだ。正直に言うと、沖に出ようにも方法が無くてね。でも、風が止む前に沖に向かわないといけなかったし、さもなければ海岸で一晩過ごす羽目になるんだ。
100フィートの船に大きなマストがある利点は、ボウマンをリグに登らせ周囲を確認できることなんだ。不幸にも、キューバから離れると全く風が吹いている気配が無くてね!この段階では海風だけが頼りだったんだけど、やっと風が吹いてきたと思ったら現地時間1時半には止んでしまったんだ。僕らの予想は見事にはずれてしまったよ。全くの無風状態で、本当に参ったね。後続は12ノットの速度で僕らに追いついてきているから、これまで築いた80マイルのリードは見事になくなってしまったよ。僕らのボートは6時間もの間動きがとれずにいたんだ。キューバ沿岸から20マイル地点で停泊している僕らを横目に、ライバルたちは次々と僕らのボートを追い抜いて行ったんだ。気温が下がるにつれてウィンワード海峡とジャマイカの間では風が出てきて、ジェニュインリスク号とボージェスト号は順調に航海を続けていたんだ!本当についてないね。
ようやく風が出てきて、僕らは5位で戦列に復帰することができたんだ。ジェニュインリスク号は3日目の朝にスコール対策を行っていて、スコールの中素晴らしい速さを見せていたよ。ジャマイカ沖から75マイル地点で、彼らは僕らより15分のリードを保っていたんだ。その後、スコールがありジャマイカ沿岸に向けジャイブを行ったんだ。実際ランブラー100号はジェニュインリスク号よりも30分前にフィニッシュラインを超えたんだけど、ハンディを含めると彼らがリードを保っていて、彼らがキューバから見せた戦略やセーリングにはお見事と言う他無いよ。
ハンディキャップを含めた結果では、ジェニュインリスク号が1位、ボージェスト号が2位、ベッレボーチェ号(52フィートのボート)が3位で、僕らが4位だったんだ。最初のレースでしかもあまりついていなかったことを考えれば、そんなに悪い結果じゃないよね。他のボートだってそれぞれトラブルを抱えていたと思うから、僕らはこの結果を受け入れるしかないし、早く状況を改善し問題はなるべく解決できるよう努力しないとね。来年に控える大きなレースの準備としては、パイナップルカップは本当に理想的なレースだったといえるね。ジェニュインリスク号の連中には心からおめでとうと言いたいし、特に最後の数百マイルでは本当に素晴らしいセーリングを見せてくれたと思うよ。