第1レグ18日目 ケニーのブログ発信
今更だけど、僕はこういう結論にたどりついたよ。オーシャンレースでは、どんなことも起こり得るってこと。昨日もそうだった。
一日の始まりは、極めてシンプルなものだったんだ。北西の微風、20~25ノットの風の中平均速度20台前半で、南へ順調に航海していたよ。スピードを上げていたんだ。航路のソフトウェアを見ると、この5日間だけでも、このレグに変動があった。テレフォニカを見ながら、どこで、どのようにしたら追い越せるか、検討しようとしたんだ。
レースの真最中だ。最高のレースを展開していたんだよ。
そして、その直後、僕たちの闘いが始まったんだ。
僕は2時間ほどデッキでケルビンを手伝ってメインの調整をしていたんだ。交代の見張りがデッキに上がってきたよ。Jonoがメインを担当し、トニーがハンドルを取ったんだ。船は前進を続け、僕たちは自分の持ち場が気に入っていて、全てが順調だったね。午前中はずっと、帆を畳んでは張り、また畳むの繰り返しだったよ。
僕が下に降りた10分後、デッキの見張りから、また帆を畳むから手伝ってくれと頼まれたんだ。トム・アディスは悪天候用の服を着て、あがって行って手伝うと言った。そのあと、帆を畳んで再び走り出した3分後、いきなりマストが倒れて来たんだ。
その日、マストに注意が必要だなんて、考えもしなかった。この船と、その全ての備品は、前進するために作られていて、僕たちは前進していたんだからね。問題は何もなく、僕たちはただ確実に前進していたんだ。
僕たちはマストに何が起きたのか、評価しようとしたよ。単に不適切なタイミングで上げてしまっただけで、ちょっと調整すればいいという可能性もあるしね。普通はそうなんだ。僕は、チームのために、そういう単純な問題であることを祈ったよ。なぜなら、予備のマストはまったく同一のものだから、同じことが起きないようにするには連結が弱くなっている部分を特定する必要があるからね。
朝起きてレースをはじめてみたら、寝る時には本来のルートから2500マイルも離れた場所で、15フィートのマストの基部にストームジブとストームトライスル固定して、2.8ノットで進んでいた。いつ食料が尽きるか、船に積んだ限られたディーゼル燃料をどう使うかを考えながらね。
こんな時こそ、友人や、自分を心配してくれる人々が必要なんだ。
コミュニケーション手段の発達した現代では、船の電話を使って、世界中の誰にでも、まるでロードアイランド州ニューポートのメモリアルビルに向かう車の中にいるかのように電話をかけることができるんだよね。ちょっとばかり、値段は高いけど。
ボルボオーシャンレース運営委員会本部に電話連絡を入れると、彼らはただちに行動を開始してくれたよ。僕たちのスポンサー企業、キモ、そしてショアチームにも連絡すると、彼らも素早く行動を開始した。たくさんの考えで頭がいっぱいだ。クリアに考えるよう努力したんだ。僕たちは今、この孤立した場所でとんでもない出来事の真っただ中にいるけれど、僕も他の10人も、このレースを続けたい、このアクシデントを乗り越えたいと願っている。それと同時に、そろそろ食事と水を取って、人心地つきたいとも思っている。いつたどり着けるかわからないまま、南アフリカに向かって漂流したくはないよね。
今の状況は、だいたいこんなところだ。
今晩18時(GMT:グリニッジ標準時)ごろ、ジム・モナコ号が僕たちの船の近くに来て、ディーゼル燃料450リットルを補給してくれるはずなんだ。結局、海の上ではディーゼルが僕たちの生命線であることがわかったね。それさえあれば、給水が可能で、15フィートのマストの基部を使って目的地に向かうことができるんだ。そしてその目的地とは・・・パンパカパーン!トリスタンダクーニャなんだ!
そう。トリスタン島。僕の娘、トーリーからのメールによれば、トリスタンは人口275人の、文字通り火山が大西洋の真ん中に突き出したような、幅6.5マイルの島だそうだよ。これが我々から最も近い、補給と、計画の次のパートに移るための修繕が可能な陸地なんだ。空港ははく、ボート以外に島に行く手段はない。
トリスタンから、僕たちは、ケープタウンから来るクレーン付きの船と合流することになるんだ。その船のクレーンで僕たちのボートの中心部分を掴んで吊り上げてもらい、僕たちの船の船架に据えてもらう。船架は僕たちのショアクルーが到着しだい、設置することになっているよ。
トリスタンの港は浅すぎて入ることができないから、この作業は海上で行わなければならないことになるんだ。
船には20フィートのコンテナに道具と部品をいっぱい持った僕たちのショアチームが乗ってくるんだよ。僕たちは皆、向こう4日間プラス数日間、バラバラになった部品を組み立て直しながら、ケープタウンへ移動することになるね。
今こうしている間にも、予備のマストがアメリカからケープタウンへ搬送されている真っ最中だ。ケープタウンについたらできるだけ早く船を水に入れ、湾内レースと次のアブダビへのレグに間に合うように、リグを正しく調整する必要があるね。
うまくいかないわけがないって?
ボルボオーシャンレース運営委員会のスタッフ、チーム内の人間、リオ海洋レスキュー隊、トリスタンの無線オペレータ、アントニオ・ベルトン(プーマCMO)とHåkan Svensson [ベルグCEO]、ジム・モナコ号のボリス船長がいなかったら、事態収拾のための今回のすごい対応のどれも、とてもじゃないけど不可能だったよ。
今後は計画どおりにいくか?そんなことは決してないってことは確かだね。
また起こる可能性があるかって?もちろんさ。
だから僕とエーモリーは、状況を報告し合うことにしている。エーモリーは今回のこのすごい展開を、カメラに収めるのは間違いないね。続きをご期待ください。ケープタウンで列の後ろにライオンが写っていても驚かないで。そんな希望が、今、この船のクルーたちを正気に保っているんだよ。
それと、明日は何が起こるかわからないという実感がね。
ケン・リード
スキッパー
プーマオーシャンレーシング ベルグ社協賛