プーマ・チームは、状況が困難であればあるほど、その力を発揮するようです。マーストランドに向けた第8レグでは、チームはスピネーカーに大きなトラブルを抱えることになってしまいました。しかし、船団の後塵を拝し最下位まで落ちた後、チームは見事な戦列復帰を果たし、2位でレースをフィニッシュする事となりました。
30年ほど前、ボルボ・オーシャン・レースがまだウィットブレッド世界一周レースだった頃、ショア・チームというものはまだ存在していなかったんだ。レース中ショアで24時間待機しているスタッフも当然いない為、セーラー達はスペア・パーツをボートに詰め込み、メンテナンスやリペアは全て自分達で行わなければいけなかったんだ。でも、近年はこの状況も様変わりしたよ...。
プーマ・オーシャン・レーシングは、オンボードのクルー数をおおよそ倍ほど上回るスタッフ数をショア・チームに抱え、40フィート・コンテナー5台を2セット所有し、それぞれボートが到着する前に交代で各ポートに向かわせているんだ。これらコンテナーには、各ストップオーバーで使用されるチームのワークショップ(作業場)、セール・ロフト(製帆場)、オフィス、そして保管場が格納されているんだよ。またこれらのコンテナーは、ボートのメンテナンスやリペアに必要なスペア・パーツ、工具、そして補給品も運んでいるんだ。コンテナーには、メカニカル・トラブルの修理に必要な工具からボートのカラーリングを補修する道具まで、ありとあらゆるものが備えられているって訳。チームはコンテナーにある道具かポート周辺で入手できる備品のみで、あらゆる問題に対処しなければいけないからね。チームが用いる工具や材料は特注品や入手困難なものが多いから、各ストップオーバーで工具や材料を入手しようと思っても、そう簡単にはいかないんだ。時には英語があまり通じない状況で、現地のホームセンターや雑貨屋でM12皿アレン・ヘッド・チタン・ボルトやカーボン・ファイバー・クロス、構造用ラバー強化エポキシ樹脂を探し出し、48時間以内にそれらを入手しないといけないんだよ!!!
殆どのショア・チームは、自分達のボートが到着する3日前にポートにやってくるんだ。ショア・チームがポートに到着する時までには、ショア・ベースを組み立てる位置にコンテナーが下ろされているんだよ。プーマのショア・チームは、まずコンテナーから機材を全て下ろし、コンテナー間にテントを張るんだ(コンテナーはセール・ロフトやワークショップとして使用)。テントが張れた時点で、各スタッフは各々の分担エリアに分かれ仕事に就くんだよ。最後のストップオーバーであるストックホルムでは、これまでに10回もショア・ベースを組み立ててきているので、全スタッフが仕事の流れを熟知しているよ。セール組立て担当であるスクーブ、トム、そしてマットは、チーム・フィジオであるサンティの手を借り、セール・ロフトの床を組立ててミシンを設置するんだ。索具装着担当であるウィルバーとフラーノが自身の作業場であるワークショップを組立て、全てのテントがきっちりと、そして安全に張られているかチェックするんだ(50ノットの風と豪雨の中で、この作業を行ったこともあるんだよ!)。チームの実務業務担当のタラとサンディーは、RIB(チェイス・ボート)を輸送していたコンテナーを事務所として使用できる様準備していくんだ。ボートビルダーのタイズ、スパイダー、マーク、そして僕は、自分達のワークショップを組み立てて、ボートを補修する際に用いるクラドルを設置するんだ。ジェスとフィオーナは僕等のシェフであり、レンタルされた20フィート・コンテナー内にキッチンを設置するんだよ。RIBドライバーであるニックは、RIBを着水させる役割を担っているんだ。ニックとショア・チームのマネージャーであるコキシー(ニール・コクス)は、ドックの水深を測り、ボートの着水時や離水時に使用するポイントを事前に確認するんだ。これまでのストップオーバーでは、何チームかがボートを座礁させてしまっていたからね。僕等はそんな目には遭いたくないから、あらかじめドックの水深を見ておく事は重要な事なんだよ。シーンとマークは電気技師とメカニックであり、ショア・ベースやドック、そしてクラドルに電気を供給してくれるんだ。それに彼等は、キッチンの給水や排水なんかも受け持ってくれているんだ。この段階で殆ど全ての作業は完了していて、既に自分の仕事を終えたスタッフ達は、まだ作業中の同僚を手伝いに行くんだよ。掃除やベース内の最終確認を除けば、これで全て準備完了だね。もしこの段階でまだ少し時間に余裕があったら、レース中のセーリング・チームの報告に従って、彼等がポートに到着する前にボート修繕準備を整えておくんだ。すっごくラッキーな時は、ボートが到着する前に休暇を取る事ができ、その時間を利用して休んだり、ポート周辺を散策したりできるんだ!
クリス・ヒル(ボートビルダー、プーマ・オーシャン・レーシング)