えっと...、
とうとう終わってしまったね。この言葉以外、今は他に思い当たらないよ。波瀾万丈な海上での生活も、とうとう終わってしまったよ。未だに信じられないね。正直、今はちょっと放心状態だよ。
ボートに課されるワーク・リストは、もう必要ないんだよね。作戦を報告するクルーもいなければ、セールのアップグレード・リストももうないんだ。多分、今後2~3日における僕らの目標は、地元のウォッカを浴びるように飲み、今回僕らが達成した偉業を盛大に祝うことだと思うよ。
そう、僕らは遂にボートで世界一周を果たしたんだ。僕はこの表現を、これまで決して口にしたり文章にしたことはなかったんだ。僕はこの偉業を、自分自身のために行ったわけではないんだ。事実、僕は以前何度か、世界一周レースには参加しないっていうことを回りに伝えていたんだ。この偉業は、僕が今後一生恩義を感じ続けるであろう素晴らしいチームと共に成し遂げたものなんだ。タイミング良く今回のメンバー達によってセーリング・チームとショア・チームを形成することができ、とても団結力のあるチームをもってこの大会に臨むことが出来たよ。今朝テレフォニカ・ブラックに追い抜かれてしまい有終の美を飾ることは出来なかったけど、この最終レッグでも僕らは素晴らしい結果を手に入れることが出来たよ。テレフォニカ・ブラックの連中は、本当に素晴らしい仕事をしたよ。また、僕らも6戦連続上位2位フィニッシュを果たせて、本当に嬉しいよ。最終レースも満足行く結果に終わり、僕らが有能なチームで素晴らしいボートを持っているって事を十分に証明する事が出来たはずだよ。
"イル・モストロ"は、安全且つ迅速に、そしてスタイリッシュに僕らを世界一周の旅路へとエスコートしてくれたね。こんなに素晴らしいボートにはこれまでお目にかかったこと無いし、恐らく今後も無いだろうね。イル・モストロには、本当にプーマ・カラーが似合っていたよ。イル・モストロは僕等に喜びや興奮を与えてくれ、そして、このスポーツの楽しさを教えてくれたんだ。このチャンスを与えてくれたプーマには本当に感謝しているし、プーマの人達が今回の僕らの走りを楽しんでくれたならとても嬉しいよ。プーマは今回、僕らと共にセーリングというスポーツに果敢にも挑むことを決めたんだ。今回、僕らはセーリング界においてだけでなく、スポーツ界全体において、プーマの名声を高めることができたと思うよ。プーマ会長兼CEOであるヨッヘン・ザイツは"ボルボ・オーシャン・レースはセーリング界の「最高峰」だ"と言っていたけど、プーマ・チームは間違いなくその最高峰の一角を担っていたと思うよ。
僕らのライバル達、ファンのみんな、そして関係者の人達には、本当に言葉では表せない恩を感じているよ。ファンのみんなも3時間毎に目を覚ましレース状況を確認する必要が無くなったから、これからはぐっすりと睡眠をとることが出来るんじゃないかな。僕らのこれまでのレース経過は波瀾万丈なものだったから、ファンのみんなは僕らのレース状況を追うのに結構大変な思いをしたと思うよ。でも、それによって随分レースは盛り上がったと思うけどね!僕ら全員、心の底からみんなに感謝しているよ。
主催者であるボルボとレース関係者の人達にも、是非感謝の意を述べたいね。このレースへの参加は、人生に一度あるかないかだと思う。間違いなくセーリング界最高のレースであり、今後も更に内容は良くなっていくと思うよ。華やかなレースを裏で支えたレース関係者の人々や各ポートにおけるボランティア達の懸命働き無くして、このレースの成功はあり得なかったと思うよ。これらの人達は、本当にこのレースを素晴らしいものにしてくれたと思うね。事実、セーリング界においてボルボ・オーシャン・レースのような大会が開催されるなんて、ちょっと前には夢にも思わなかったよ。本当に驚くばかりだね。
今回の話はここまでにするよ。チーム・メンバー全員にちょっとした休暇が与えられたから、僕はしっかりと睡眠をとって、この9ヵ月で起こったことをきちんと整理しようと思っているんだ。本当にこの9ヵ月は、あっという間に過ぎてしまったよ。
今回のレースに参加して、僕の人生観も随分変わったよ。キャシーやトリー、そして僕は、ボルボのおかげで世界一周を果たすことが出来たんだ。僕ら全員が、このレースにとても感謝しているよ。
それではまた。
-ケニー
たった今このニュースを耳にしたよ。レース距離が延長されたんだ!!!!!レース主催者はこれまでの37,000マイルのレース距離では満足できなかったらしく、今回のレース距離を引き延ばすことを決めたんだよ。なんてことだ。
ついていない事に、今僕らはレースをリードしているんだけど、段々風邪が弱まってきているんだ。そして、軽風下で速さを発揮する2隻のボート(テレフォニカ・ブラックとブルー)が、僕らの背後にまで迫ってきているんだよ。やっぱり今回も、一筋縄ではいきそうもないよ。
僕らはここまで、堅実なレース運びをしていると言えるね。このままの調子で最後まで走り切る必要があるよ。次はゴール後に報告するよ。これから30マイルにも及ぶ三角地帯にさしかかるんだけど、きっと激しいレースになると思うよ。
おやつと上着を取りに来て、ちょっと休憩をしようと思い下に降りてきたんだ。
さぁ、タッキングでも開始しようかな。
-ケニー

今回のレグでの目標は、なんとしてもシリーズ2位を手に入れることだよ。このレースでは、プレッシャーは全く存在しないね。完走さえすればシリーズ2位が決まるけど、シリーズ2位を手に入れることが出来たら本当に嬉しいよ。詳しく説明すると、もしサンクト・ペテルブルグでのゴールを7位で迎えたら、僕等には2ポイント加算されるんだ。仮にテレフォニカ・ブルーが優勝したら、彼等には8ポイントが加算される。7位と2位とでは6ポイント差があるけど、僕等とテレフォニカ・ブルーの間には現在6.5ポイントの差があるからね。とにかくいつも通りレースに臨み、レースを楽しんでくるよ。今大会最後のレースをプーマ・サポーターと一緒に参加出来ることを嬉しく思うし、レースに勝てるよう最善を尽くしてくるよ。
もちろん、僕等はこのレグでも優勝を狙っているよ。もし僕等が今回のレース中にデッキでチェッカーをして遊んでいたら、それはとんでもないことだよね。このレースに参加している全てのセーラーとボートは、勝つ為にレースをしているんだ。シリーズ2位がかかっていようがいまいが‐順位に関わらず‐僕等はこのレグで優勝を目指しているんだ。これが僕等の目標であり、日々厳しいトレーニングを積んでいる理由なんだよ。
今回のレグがボルボ・オーシャン・レースの最終戦だなんて、本当に信じられないよ。この大会がスペインのアリカンテで始まったのがほんの2週間前のように感じるし、その時は世界一周がどんなものなのか全く理解できなかったんだよね。そして約37,000マイルを走破した今、僕等は最終戦を迎えているんだ。自分自身でも信じられないけど、これは本当に凄い事だよね。世界一周を達成したってことは、きっとこのレグが終わった後も、直ぐには実感する事ができないと思うよ。この大会を締めくくる準備はもう既に十分に出来ているけど、同時にレグ終了後は凄くこみ上げてくるものがあるだろうね。ゴール後チーム・メートを見渡しながら、"これがチームとしてみんなと一緒にいられる最後の時なんだ..."って思うだろうね。チームとして集まってポートから見送られるのも、きっとこれが最後になるんだろうね。ストックホルムは本当に素晴らしいところだったよ。プーマ・チームはここでも素晴らしいストップオーバーを経験したけど、とにかく、この大会を締めくくる準備はもう既に十分に出来ているよ。
‐ケン・リード

現在、ドラッグ・レースの真っ最中だよ。個人的には、今吹いてるこの風が、ゴールするまでもってくれる事を祈っているんだ。僕等は色んな天気データを持っているんだけど、どれも今一信用できないんだよね。実際、今は16ノットの西風が僕等をゴールまで押し進めてくれていて、この状況でこの風を得ることが出来てとてもラッキーだよ。
今日(この辺一体では夜になっても暗くならないから、今日と言う言葉はレースが始まってからを意味しているね)は色んな事が起こったよ。今朝早くスウェーデンの南沖でジャイビングをしていたんだけど、その際海岸に近付き過ぎてしまってね。おかげでエリクソン軍団にその隙をつかれてしまったよ。事実、E4はその隙に僕等をパスしていったんだ。僕等はE4のハーフ・マイル後ろの沖合いを走行していて、E3の1マイル前に位置していたんだ。風は20ノット中盤を記録していて、E4が徐々にその力を発揮していったんだ。僕等は何とかしてE4に置いて行かれない様、これまで1マイル以内の差を保って走っているんだ。
ところが、突然風が僕等とE4に牙を向き始めてね。15ノットで走行中、突然、風が5ノットまで落ちてしまったんだ。一体どうなってるんだ?って感じだよ。E3はこの状況を数マイル後ろからじっと見ていて、文字通り僕等とE4を上手いこと追い抜いて行ったんだ。僕等にとっては良くない展開だね。
でも、西に陣を取るエリクソンに対して僕らには奥の手があって、風向きが再度元の方角に戻ったんだよ。それによって、僕等はE3とE4に追いつく事ができたんだ。今は彼等と、抜きつ抜かれつのデッド・ヒートを繰り広げている真っ最中なんだよ。彼等は両方ともとても速いから、僕等も必死にボートを走らせているんだ。この状況は昔女の子を追っかけていた状況に少し似ているから、最終的には上手い事いくと思うよ。
そろそろ切り上げる時間だ。デッキでは今色んな事が起きているよ。それじゃまた後で。
‐ケニー

今回のレグのスタートは、本当に狂気じみたものになってしまったよ。何隻かのボートがスタートで岩壁に捕まり身動きが取れなくなり、一隻のボートが船体の半分を乗り上げる状況を、搭乗しているクルー達はただただ見守るしかなかったんだ。そう、スタートで座礁事故が起こってしまったんだ。テレフォニカ・ブルーが岩壁に座礁する光景は、見ている者に吐き気を催させるほどのインパクトを持っていたよ。誰もが目にしたくない光景であり、そして、誰もが決して関わりたくないと思うほどグロテスクな光景だったよ。
この事故が起こった時、僕等はテレフォニカ・ブルーから10隻ほど離れた位置にいて、2位を確保しながら南に向かっていたんだ。事故直前、ケーピーは僕の隣に座っていたんだけど、彼は、間もなく僕等は航路変更をしないといけないと言っていたんだ。あの時、僕等は13ノットの速度で走行していて、次の瞬間...、ドンっていう音が聞こえたんだ。僕等の目の前で、テレフォニカ・ブルーのトランサムが完全に海面から浮き上がっているのが見えたんだ。僕はケーピーに"一体どうすればいいんだ!!!"と叫び、彼は"上がれ!!!"と答えたんだ。僕等は必死にボートの航路を変え、僅かなところで何とか難を逃れる事ができたんだ。
誰だってあんな光景を見たいとは絶対に思わないし、テレフォニカ・ブルーの連中が全員無事である事を心の底から願っているよ。ストックホルムまでには、テレフォニカ・ブルーが戦列に復帰してくれる事を切に願っているよ。サンクト・ペテルブルクでのゴールは、全ボート揃って迎えなければ全く意味が無いんだよ。
とりあえず今は、この辺で報告を一旦終えるよ。レースについてはまた後ほど伝えるよ。
ケニー
どこから話していいかわからないよ。他の連中が今回のレースのことを本に書いて出版しろって言ってくるんだけど、実際、このレグに関してのみの本だったら書けるね!ここまで来るのに本当にいろんな事が起こったよ-まだこのレグが始まって、たったの4日半しか経っていないのにね!!!
このレグで起こった出来事について詳しく話す前に、僕のボルボ・キャリアの中でも最低の内容だった昨日のブログについて話すことにするよ。昨日のブログでは何とか明るく振る舞おうとしたけど、実際そうするのが凄く難しくてね。本当に僕らは落ち込んでいたんだ。何でこんな風になってしまったのか、なぜ他の船団とはぐれてしまったのかと、僕らは色々と考えていたんだよ。でも、僕らには別の作戦があって、何が何でもそれをうまく実行してやろうと思っていたんだ。ケーピーはその作戦に凄く自信があってね、それで僕らはそれを実行したんだ。
低気圧の中心は僕らが思ってた以上に東に位置していて、そのおかげでとんでもない目に遭ってしまったんだ。思い起こせば、この低気圧のおかげで、僕らは西へと素早く航路を変えることができたんだよね。2時間ほど低気圧の中心に捕まってしまい、その後のポジション・レポートで、僕らが船団から35マイルも離されている可能性があると分かったんだ。最新のテクノロジーとは残酷なもので、3時間後の次のポジション・レポートも、同じように滅入る結果を僕らに突きつけたんだ。
次は、さっき吹き荒れてた強風について話そうか。そう、他のボートがスウェーデンに向けて順調にセールしている一方で、僕らはまたしても40ノットの逆風の餌食になってしまったんだ。これは僕らが他のボートより上方に位置していたから仕方がない事なんだけど、この状況が後に、僕らを見事戦列に復帰させてくれる事になるんだ。そして、実際にそうなったよ-風は20ノットまで弱り、僕らが猛烈な勢いで他のボートに追いつき始めた頃、他のボートは低気圧のど真ん中にはまってしまったんだ。とは言っても、まだまだ予断を許さない状況だったけどね。
あと僕らに必要だったのは僅かな運だけだったんだけど、幸運の女神は僕らを見放さなかったね。僕らはより多くの風を得るために、デンマークの北側のオフショアに位置していたんだ。でも、僕らが沖合いを走っていた時に、まさかそこで20ノットのスコールに遭うとは思わなかったよ。おかげで他のボートは、海岸方面に流されないよう必死に沖合いに向かう羽目になったけどね。事は上手く運んだね!僕らは見事このチャンスをものにしたんだ。次のレポートで僕らは3位に浮上し、その後直ぐにリーチングを行えば、グリーン・ドラゴンに対して僅かな逆転のチャンスを生み出す事ができるって思ったんだ。
そして、僕らは予定通りリーチングを行ったよ。再度スコールがやってきて、そのスコールが一時的に止んだ時に、風下100mのところにグリーン・ドラゴンが見えたんだ-デッキにいたグリーン・ドラゴンの連中はとってもビビったと思うけどね!グリーン・ドラゴンを見事抜き去り、これまでで最もあり得ない展開で、これまで自分が関わった中で最も信じられない2位フィニッシュを果たしたんだ。もちろん、自分自身には言い聞かせてはいたけど、本当にこんな結果が待っているとは思わなかったよ。今はまともにセールできないくらいに興奮しているよ。ここまで来るのに費やした肉体的・精神的な労力は、とてつもないものだったよ。今晩はぐっすり眠れそうだよ。
最後に、このチームについてちょっとだけ言わせてもらうよ-特に、アンドリュー・ケープについてね。本当は僕ら全員途中で諦めかけていたんだ。あらゆる事が上手くいかなくてね。スピネーカーにはトラブルが発生するし、本当に何もかも上手くいかなかったんだ。本当に最悪だったよ。でもケーピーは僕等に、荷物をまとめて帰るか、それとも一か八か天候の成り行きに賭けるかのどちらかだと言ってきたんだ。僕らはもちろんケーピーの考えに同意し、すぐに仕事に戻ったんだ。僕らは不平不満を口にせずやるべき事をやり、その結果、見事努力が報われたんだ。このチームの決断力と希望を捨てないその姿勢には、本当に頭が下がるよ。僕はこのチームを本当に誇りに思っているよ。本当にこのチームの一員であることを光栄に思うよ。
さぁ、そろそろ寝る時間だ。でも、こういう類の出来事は、多分またすぐに僕らの身に起こると思うよ。このレースが、僕らにとって平穏無事に終わるとはとても思えないからね。
ケニー
僕等はここ数日間、貴重なポイントを賭けた激しい争いを演じていたんだ。今日は3位まで順位を上げたんだけど、驚くべきことに、ロッテルダム・ループを抜けた後、追い風で走行していた時に僕等の特大スピネーカーが破れてしまったんだ。その後、不運の連鎖反応が起きて、結局他のチームにかなり離されてしまったんだ。新しい作戦を試す前に、とんだ大災難に遭ってしまったよ。
大スピネーカーが破れた後、代わりに小スピネーカーを張ることになり、他のボートよりも高い航路でセールする羽目になったんだ。予備の大スピネーカーを持って行くことは禁止されているから、その唯一のスピネーカーにトラブルが起きたら事態は深刻だよ。僕等の大スピネーカーは、突然何の前触れもなく、ヘッドパッチの真下からちぎれてしまったんだ。それで他のボートより上方を走行しなければいけなくなり、フリートから離されてしまったって訳。ストーム用の小さなスピネーカーで何とか他のボートに追いつこうと、今朝から可能な限りの事はしているんだけどね。そしたら突然、風が弱まってしまったんだ。恐らくみんなは、この風の中素早くジャイビングして、風下に戻るって作戦を考えているでしょ?風量はまだ十分で、実際ジャイビングするにはいい機会だと思っているでしょ?違うんだよ。この風はもっともっと弱いんだ...。今僕等は、低気圧の真っ只中にいるんだ。信じられないよ。
だから、今僕等が出来る事は、低気圧の中心から何とか抜け出し、今度は他の連中がこの弱風の犠牲になるのを待つ事だけなんだ。単純に、何か劇的なことが起こらない限り、今から僕等が他のボートに追いつくことは無理なんだよ。この考えが上手くいくかどうかはわかないけどね。とにかく今後も全力を尽くすだけだよ...。
面白い事に、レース中では、いつも通りに作戦を実行しない時が多々あるんだ。その様な場合、大抵それなりの理由があるんだ。そしてその殆どの場合は、予想外の出来事が起こり、レース・プランに変更を迫られたってのが理由になるんだ。その予想外の出来事は既に僕等のボートに起こってしまったんだけど、大抵こういう事は起こって欲しくない時に起こるんだよね。僕等はいつもそういう状況でも一致団結して乗り越えてきたし、大抵そういう状況ではこれまで良い結果を残してきてるんだ。
とにかく、この状況を上手く切り抜けられる様がんばるよ。正直今の状況は僕等が最も望んでいないものだから、本当にキツイね。ちょっと前までテレフォニカ・ブルーが船団の後方に位置していて、僕等は順調に先頭に追いついていたのに。全くどうしようもないね。
この状況から何とか最良の結果が得られる様、ベストを尽くすよ。もちろん、チームは今ちょっとへこんでいるけど、僕等は途中でレースを投げ出したりしないし、今後も全力を尽くすよ。時には、物事は自分の思った通りには行かないものさ。真偽の程は神のみぞ知るって感じだけど、今日が僕らにとってそういう日だったのかもしれないね。
ケニー
"アイルランドに引っ越したいと思ってるんだよ。
アイルランドはいつも天気が良いし(少なくとも僕らがいた間は)、ゴルフも凄く面白いんだ。人々もこれ以上良い人達はこの世に存在しない、って言うくらい素晴らしいし、美味しいビールがどんな場所でも飲めるしね。アイルランドにいた時はレースに勝つこともできたし、人々は1日中僕らにサインや写真を求め集まってくれるんだ。んー、アイルランドを嫌いになる理由なんて、どこにも無いよね?!?!
レッツ・ドゥ・イット・ゴールウェイが、今後レースのストップオーバーで恒例となり得る面白いことをやっていたよ。彼らはボールを転がして、地域のみんながそれを掴んで走るんだ-参加した全員の人達におめでとうと言いたいね。2週間の間、地域のみんなと一緒にいられて本当に楽しかったし、次のレースが開催される前に、間違いなくまたここに戻ってくるよ。今度、誰か一緒にゴルフでもやらない?
天気も凄く良くて、ただ暖かくて晴れているだけでなく、風は強くてとても速かったんだ!
僕らは大体スタートの時は悪天候に見舞われるか、もしくはボートが流されてしまう事が多いんだ。17時間前にこのレースでポートを離れた時と同様、僕等はこれまで、理想的な風を受けながら航路に着くことが殆ど出来なかったんだよ。そういう状況では、素晴らしい瞬間を体験する事ができる半面、身の毛もよだつような事もあったよ。
見送りのフリートが離れ、海岸に向けたスピード・レースが開始されたんだ。グリーン・ドラゴンのみが沖に向かい、僕らを含めた他のチームの一団に対して、数マイルのアドバンテージを築くことに成功したんだ。そして凄い事が起こったんだ!帆を上げてジャイビングしようとしたまさにその時、突然38ノットのスコールが始まったんだ!信じられないね!状況が一変したから、僕らはカイトを下ろすことにして、スコールが止むまでジブにスイッチする事にしたんだ。考えは良かったけど、上手くこなすことが出来なかったね。38.7ノットの中ギアを全開にするのは、とてもリスクがあるよね。カイトを下げるだけでも十分危ないのに、ボートが跳ねたりしている時は特に危ないよ。この間、風速38ノットの風が吹きっぱなしだった事は、もう既に教えたっけ?
ようやくハルヤードを掴み、ジャイブする事が出来たんだ。グリーン・ドラゴンだけが唯一スコール前からジャイブを開始していて、それによって、僕らに対して数マイルのリードを築く事に成功したんだ。E4を最後に目にした時は、彼等のボートのサイドが海面に触れるほど揺れていたよ。結局、E4も僕らの10分後くらいにようやくジャイブをし始めたんだ。アイルランド島の下側を曲がり抜け、平均27ノットでファストネット・ロックを越え、全チームが再び一団を組むことになったんだ。まるで各チームのボートがマグネットで引き合うかのように接近していて、離れることが出来ないんだよ。
今、僕らは公式にイギリス海峡に入ったよ。今ちょうどランズ・エンドを通過し、ここに到着するまで17時間かかったけど、非公式ながら、恐らくこのタイムは船による最速記録になると思うよ。一晩中ボートを凄いスピードで走らせ、今風は緩やかになり後方から吹いているよ。僕らは今日殆どの間、イギリス海峡を中~軽風の中で走行すると思うよ。E4は今風下2マイルのところに位置し、テレフォニカ・ブルーは約2マイル、E3は約3マイルE4の後方を走っているよ。再び今回のレースでも、鍵を握るのはグリーン・ドラゴンだね。彼らはフランス側の海峡を抜けて、最終的には相当なリードを保って他のボートに合流してくるはずだよ。まだはっきりしないけど、とにかく僕らはテレフォニカ・ブルーに注意を払わなきゃいけないね。このレグでの優勝を諦めた訳じゃないけど、とにかく今は目の前にある仕事、つまり、テレフォニカ・ブルーに対してポイントを稼ぐことに集中しないとね。
何事もないレース初日では、テレフォニカ・ブルーは精彩を欠くから、僕らは直ぐに調子を取り戻すと思うよ。さっき、チームのみんなで昨晩の走りっぱなしの夜について話していたんだ。今は水しぶきもそんなに酷くないから、みんなとても安心しているよ。ボートは凄く速いけど、とてもビショビショだよ!プーマが素晴らしい悪天候用のギアを制作してくれたから、とても有り難いよ。ちゃんとここで、その効果は証明されているよ!
ケニー
このレポートを熱心に待っているみなさんへ、僕等は今からスティールスプレイを用い今後12時間は消息を経つので、今のうちに報告しておくよ。なぜ今そうするかって?ラダー・トラブルの後、僕等は見事に戦列に復帰することができ、このレースでの次の山場がレース結果を大きく左右すると思うからなんだ‐それは、南方へと風向きが変わるゴールウェイに向かう最後のジャイビングだよ。僕等がジャイビングをする時は、そのレグでの結果を素晴らしいものにするか台無しにするかのどちらかなんだ("台無しに"なんて言葉使っちゃダメだけど、ここでは的を射ているよ)。それに、これまでみんなは他のチームの動向も確認していたと思うけど、E3は既にスティールプレイに入っているよね。これは賭けてもいいんだけど、今からこのレース初の、全チームによる一斉スティールプレイが見られると思うよ。
これによって、みんなにとってレースが一層面白いものになるのかな?それとも、野球の試合で、7回に入ったところでテレビを消してしまい、その後の展開を見逃してしまうのと同じ様な感じになってしまうのかな?
これで、3時間ごとに電話やパソコンに向かう必要が無くなって、みんなの気が一時的に休まるのかな?この展開によって夜はぐっすり眠れて、お気に入りのチームの様子をチェックする為に、わざわざベッドから起き上がる必要もなくなるのかな?
はたまた、これまでずっとレースを追ってきたのに、レースの一番の山場で文字通りスイッチを切られてしまい、酷く憤慨してしまっているのかな?
スティールスプレイには、複雑な心境を抱いているんだ。僕のこの心境は、上に書いた質問に対するみなさんの答えによって、左右されるんだ。ファンとしては、レースの山場でどんな展開が起こっているのかちゃんと見届けたいと思うよ。競技者としては、3時間ごとのレポートは正直きつく、そのおかげで船内ではさらなる不安に苛まれるんだ。でも、3時間間隔では劇的なことは起こし難いから、このレポートによって各ボートはお互いより近距離を保っていられるみたいだね。スティールスプレイは、ちょうどポジション・レポートの無かった頃のレースに戻った感じになるよね。最初のホワイトブレッド・レースの頃から僕のレポートを見ている人達は、ハーバーに到着するまで自分の順位を知らなかったという話をご存じだよね。それこそまさに、究極のスティールスプレイだよね!でも正直に言えば、スティールスプレイに関しては、使っても使わなくてもどちらでも良いよ。個人的には、スティールスプレイは少し過大評価され過ぎていると思うけどね。
それじゃ、また次回のレポートで。次みなさんが僕らの様子を確認する時は、僕らと僕らの北西に位置しているライバル達とのギャップが、少しでも埋まっていたらいいね。個々のチームでゴールまでの最終距離が異なって見えるけど、ジャイビングする時は、北西にいるチームの方が実際には僕らよりも前に位置していると思うよ。まだまだやることは沢山あるから、とりあえず次の作戦が上手くいくことを祈るよ。それでは12時間後に。僕らの様子を確認する為にいちいちベッドから起き上がる必要が無いから、今晩はしっかりと睡眠を取ってね。
ケニー